駄目な親

数年前、中学校の同級生と再会した。

しばらく談笑した後、することもなくなったので本屋に行って思い思いに本を買った。

彼女の買った本は、はっきり覚えていないが、いかに子供にいうことを聞かせるか、もしくは言うことを聞かない子供、というようなタイトルの本だった。

あろうことか、彼女はその本を子供の手に届く所に置いたまま外出してしまった。

その当時は、軽率な人だなぁ、この人はダメな親だなぁと漠然と考えていた。

実際、彼女は今でも子供を押し付けてコントロールすることに躍起になっているようで、正直その子供には同情してしまう。

 

あれから暫く経って、なぜ彼女が駄目な親なのか、もう少し具体的にわかるようになってきた。

数か月前、中間管理職で苦しんでいる知人と話をした。

その話の結論は、他人を変えることがいかに難しいか、もしくは、場合によってはいかに非現実的か、一方で自分を変えることはそれに比べていかに簡単か、ということだった。

 

彼女は、当時30代半ばだった。若さに満ち溢れる年齢ではないが、これからいくらでも自分を変えて行ける年齢である。

それにも関わらず、他を変えることに注力し、己を変えることは放棄していた。

そのような人間に、いくら変われと言われたところで納得はいかないだろう。

親は、口で語るのではなく背中で語るべきだ。

 

子供にこうなってほしいという思いがあるならば、自らがそうなる姿勢を見せて、そこでようやく出発点に立ったと考えるぐらいが妥当だろう。

ましてや、これだけ言っているのに子供が言うことを聞かない、自分は不幸だと結論付けるのは言語道断である。

口で言うだけで、姿勢を見せないのだから、それは当然の帰結と考える。